工場紹介①:世界中の人に安心で安全な水を——株式会社トップウォーターシステムズ

2020.03.24 / REPORT

現在、安全な飲み水の確保が困難ななかで暮らしている人は、世界中で約22億人いると言われている[*1]。さらに毎年多くの子どもたちが、不衛生な飲み水が原因の下痢で命を落とす。蛇口をひねれば安全な水が飲めるというのは、けっして当たり前のことではない。SDGsが掲げる17の目標の6番目は「安全な水とトイレを世界中に」だ。そして日本でも、大規模な災害時には、安全な水の確保は大きな課題となる。 安全で安心な水の供給を目指し、産業用純水装置や災害時移動型浄水装置などの開発・設計からメンテナンスを展開するのが、株式会社トップウォーターシステムズだ。限りある水資源を活用して持続可能な社会の実現を目指す。昨年、梅森プラットフォームへと移転し、地域との関係を深めながら、世界に向けた展開を模索している。

*1:ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)による水と衛生に関する共同監査プログラム(JMP)「Progress on drinking water, sanitation and hygiene: 2000-2017: Special focus on inequalities」(2019)

武田龍太郎氏
 

「水」ビジネスとの出会い

社長の武田龍太郎氏が「水」と出会ったのは平成元年。

「当時、アメリカではウォーターサーバーが普及していて「水を買う」という文化に興味を抱きました。また、そこで使われていた「逆浸透膜」が、水に溶けている不純物をイオンレベルで取り去るということに驚きました。」

当時の日本は、水蒸気を冷やして純水をつくっていたが、それと同じ水質を「逆浸透膜」でつくれることに魅力を感じ、アメリカから浄水器の輸入を始めた。しかし、当時は漏水などのトラブルが多く、メーカーが倒産すると修理すら難しいなど、導入後のサービス面に課題があった。そこで浄水器を自社で開発する方針へと切り替え、今では重要な部品の多くも国内で製造されたものを用いるようになった。
 

高い性能と使い勝手を両立

トップウォーターシステムズの主力製品は逆浸透膜を使った純水装置だ。逆浸透膜はもともと宇宙空間で貴重な水を確保するため、尿から水(H2O)を取り出す技術としてNASAが開発した。何層にも重ねられた浸透膜が、水中の不純物を取り除き、透過水(純水)と濃縮水(排水)に分離する。

浸透膜の孔のサイズは僅か0.0001ミクロン。通常、バクテリアが1.0~0.4ミクロン、ウイルスでも0.4~06ミクロンということなので、驚異的な小ささだ。市販されている浄水器でも0.1ミクロンほどだという。

この純水装置を扱いやすいキャビネット型にし、用途に合わせたサイズ展開に取り組むなど、つねに顧客ニーズを踏まえた商品展開を心がけている。また、現場の声を聞きながら柔軟にカスタマイズできることも大手にはない強みだ。
 

メンテナンスという柱

「会社の特徴について武田氏は「製品製造と販売から、そのあとのメンテナンスまでやっているところが強みだと思います。数年経つとメンテナンスが必要になるので、そこも事業の柱の一つにしていきたい」

とメンテナンスの重要性を強調する。

それもアメリカから製品を輸入していた際の経験から、購入後にどのようなサービスを提供できるかを感じてきたゆえだ。一般的にものづくり企業と言えば、「つくる」段階に注目が集まるが、それがどう使われていくか、経年変化に合わせた適切なアフターサービスが提供できるか、時代に合わせた商品のアップデートに当たって顧客とどう付き合うかを重視している。


 

産業用から災害用浄水へ

東日本大震災をきっかけに、産業用浄水装置だけでなく災害用の製品開発にも力を入れてきた。逆浸透膜を用いた純水装置にキャスターなどを取り付け移動式に改良した「TOPレスキューRO」は、福島に実機投入され、被災地に安全な飲み水を提供した。

その実績から東京都の先進的防災技術実用化支援事業に採択され、病院の赤ちゃんのミルク水や医療現場における医療用衛生水の確保までが可能になった「TOPレスキューROⅡ」も開発し、東京都災害拠点病院でもある東京労災病院(大田区)などに設置されている。

武田氏は「東京は世界の災害対策のモデルになるのではないでしょうか。想定外の災害が増えていくなかで、その経験をどう生かしていくかを考えたい」と語る。

まずは地域の人々に会社や製品を知ってもらい緊急時に利用してもらえるようにと、大田区の企画や防災イベントに積極的に参加している。
 

安全・安心な水を世界へ

今後の展望について聞くと

「やっとスタートラインについたと思っています。事業所の移転をきっかけにブランド力を高め、海外進出への布石を打っていきたい」

と武田氏。

メンテナンスも含めた質の高いサービスが海外展開においては強みになるものの、中国や韓国のメーカーに対抗するには価格面での競争力も不可欠だ。海外に工場をつくることも視野に入れ、まずはASEAN諸国を中心に現地の情勢を見極めていく予定だ。2020年にはタイ・ベトナムなどの展示会出展を計画している。 梅森プラットフォームに集まる多様なひとたちとのコラボレーションにも期待をよせているという。

2020年6月にはタイでの展示会を計画している。そのためにも大田区の事業者間でネットワークを強化することが重要だと考え、これまでに梅森プラットフォームを会場とした情報交換会を実施してきた。近年はアフリカや中東からの視察も増えているのだとか。

梅森プラットフォームを拠点に、トップウォーターシステムズの製品から、安全で安心な水を誰もが手に入れることができる、そんな当たり前が世界中に広がることを期待したい。

[文=川勝真一]